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東洋経済ONLINE

理事長 上昌広

東洋経済ONLINE(2020/10/29) 日本のコロナ対策がどうも心配すぎる根本理由 検査体制が弱いまま海外渡航再開していいのか

「コロナ対策の肝は重症者を救命することに加えて、無症状の感染者を見つけて、隔離あるいは行動を自粛してもらうことだ。日本政府は、後者を軽視してきた。これは世界の潮流とは正反対だ。」

「イギリスは検査体制の確立に手間取り、感染者・死者を増やすと同時に、国民を不安に陥れた。この結果、甚大な人的・経済的ダメージを蒙った。その反省の象徴が前出の論文(『ランセット』の10月24日号)だ。イギリスは、8月19日、全人口を対象に定期的にPCR検査を実施する方針を表明している。菅首相の所信表明演説(医療資源を重症者に重点化)とは対照的だ。」

「イギリスが、このような方針転換をはかったのは、モデルとなるべき国(中国)があったからだ。中国は大量検査体制を確立し、コロナ感染の抑制に成功している。

 もちろん、中国の統計データに問題がある可能性は否定できない。ただ、青島の大量PCR検査の結果については、CNNなど海外メディアは大きく報じており、世界では、それなりに評価されている。」

「厚生労働省は民間や自治体の足を引っ張った。8月24日、世田谷区が、区内の高齢者施設などの職員約2万3000人を対象に「プール方式」を用いたPCR検査を実施しようとしたが、厚労省は「科学的知見が確立されていない」ため、行政検査とは見なせないと回答した。厚労省の問題は、これだけではない。医系技官のトップで、コロナ対策を主導してきた鈴木康裕・前医務技監は、10月24日付の毎日新聞のインタビューで「前提としてPCR検査がどういうものか考える必要はある。陽性と結果が出たからといって、本当に感染しているかを意味しない。ウイルスの死骸が残って、それに反応する場合もある」と(国内外のコロナ研究の成果と矛盾)コメントしている。

 このままでは日本の医療体制が崩壊するのは、時間の問題と考えている。きっかけは国際交流の再開だ。海外渡航を再開すれば、日本より感染者が多い欧米からも渡航者が入ってくる。空港などの水際でPCR検査体制を強化しても、一部の感染者は見落とされるだろう。いったん、国内に入れば、無症状者は検査されない。そして、彼らは日本を忙しく往来する。感染は容易に拡大しかねない。」

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