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インターン

医療ガバナンス研究所の目標は、世界と戦える若い人材を育てることです。

私たちは、医学生に限らず、あらゆる若者をインターンとして受け入れ、患者中心の思考を養成するためのプログラムを、それぞれのニーズやキャラクターに合わせて個別に提供しています。彼らにコミットし、現場での経験を通して、成長を促します。

また、特に医学生においては、医師としてのスキルを醸成するために研究活動を重視しています。

ぜひ私たちと世界の舞台で切磋琢磨しませんか。

国際医療福祉大学医学部医学科3年

丸山敬大

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1.インターンのきっかけ

私は、医療ガバナンス研究所で2週間インターンをさせていただきました。私が大学に入学してから今まで約2年半の間、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた学生生活を送ってきた為、学外で学ぶ機会がほとんどありませんでした。そんな中、昨年の「現場からの医療改革推進協議会シンポジウム」に参加させていただき上先生にお世話になったご縁で、医療ガバナンス研究所でのインターンについて知りました。このインターンに申し込んだのは、今までの大学での勉強に加え、広く多様な人脈をお持ちで幅広くご活躍されている上先生のもとで広い世界に触れ自分の視野を広げたいという理由からでした。私がこの密度の濃い2週間で特に学んだことは「人間関係の重要性」「どの方向を向いて行動をするか」の2つです。

私は「人間関係の重要性」について特に「人間関係の構築」という面から学びました。私は昨年の「現場からの医療改革推進協議会シンポジウム」に参加させていただくまで目上の方にお会いしたことがほとんどなく、シンポジウムに参加させていただいたときも先生方と名刺交換をさせていただくだけで満足していました。しかし、今回のインターンの中で、出会った方にお会いできた感謝の気持ちを込めてメールを送ること、そのようにしながら人とつながっていくことの重要性を上先生から教えていただきました。お会いできた方と名刺交換後も継続してつながっていくやり取りの大切さを知りました。その結果、インターン中に元検察官の郷原信郎さんをはじめ、普段はお会いすることすらできないたくさん方々とつながることができました。

次に「どの方向を向いて行動するか」ということについて、上先生から様々なエピソードを伺う中で学びました。

 

1つ目のエピソードは、福島県立医科大学教授の坪倉正治先生が東日本大震災後に相馬、南相馬の医療支援のため福島に入られたときの話です。福島に入られる際に上先生が坪倉先生に対して「研究をしに行くのではなく患者を診療しに行くのだ」と繰り返しおっしゃっていたと伺いました。そして坪倉先生が患者のことを第一に考え被災された方々の方を向いて医療を実践された結果、地元の方々から今もなお信頼され続けていると知りました。

そして2つ目のエピソードは、強豪大阪桐蔭高校野球部の西谷監督についての話です。西谷監督は夜遅くまで寮で個別面談をおこない、それぞれの選手が成長するために何をするべきかを話し合っていると伺いました。この話から、名将・西谷監督はとにかく選手の方向を向いた指導をされているのだと感じました。この2つのエピソードからわかるように、「どの方向を向いて行動するか」ということが結果を大きく変えうるのだということ知りました。私が今後様々な活動をおこなう中で、どの方向を向いて行動するべきかしっかり考えて活動していきたいと強く思いました。

このようにインターンの中では、大学の授業では学ぶことのできない医療以外の貴重な学びをさせていただきました。私は一人前の医療者になりたいと医学を志しましたが、医学の知識や経験だけではない、一社会人になるためには様々な学びが必要なのだと教えていただきました。将来一医療者として医療現場に入ってからも、これらのことを忘れずに精進していきたいです。

2.インターンで特に印象に残ったこと

ここからは今回のインターンで特に印象に残ったことについて紹介します。

1つ目は、福島県立医科大学にて、海上自衛隊幹部学校教官の後瀉桂太郎さんによる安全保障や核に関する講演を聞いたことです。この講演の中で特に福島で核についての話を聞いたことで、ロシアが核を使用するかもしれないこと、そして最近日本でも原発再稼働に向けて動き出しているなど、原子力についての問題を再認識するとともに、めまぐるしく動く安全保障、特に日本の安全保障に関して自分の中で随時情報をアップデートし続けて学ぶべきであると改めて感じました。その講演会の後、福島県立医科大学の竹ノ下誠一理事長とお会いする機会がありました。理事長ご自身のご経験を伺い、トップに立つ方の考え方を学ぶことができ大変刺激を受けました。

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後瀉桂太郎さん講演会で

2つ目は、福島でおこなわれた立谷陽介さん主催のコンサートを手伝いさせていただいたことです。このコンサートを通じてNHKの八重樫伊知郎さんとお会いする機会がありました。少しの間でしたがテレビ制作に関わるプロフェッショナルの方とお話しすることができ、貴重な経験となりました。

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立谷陽介さんコンサート

3つ目は元検察官の郷原信郎さんの事務所に伺ったことです。郷原さんは、東京大学理学部を卒業されたのちに司法試験に合格され検事になられたという異色の経歴をお持ちで、上先生に同行させていただかないとお会いできない方でした。私はその時に感じた郷原さんの何事にも動じない、何度も勝負所を経験されてきたというオーラが非常に印象に残っています。

郷原信郎さんの事務所で

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最後に4つ目は、アメリカから来られた笹川財団の方々と上先生とのディスカッションを見学させていただいたことです。私の通っている大学では英語での医学の学びに非常に力を入れているので、大学外で海外の方とお会いすることができとても良い経験になったとともに、主に日本の新型コロナウイルス対策の現状についてのディスカッションは非常に勉強になりました。

今回のインターンを通してたくさんの方にお会いし、その出会い1つ1つが貴重な経験となり、大学にいるだけでは知ることができなかった多くの世界を知ることができました。大学では和田耕治教授や松本哲哉主任教授など多くの医学の専門家の先生方の授業を受け学んでおりますが、郷原さんや後瀉さん、八重樫さんにお会いしたことで医療以外でのプロフェッショナリズムについても触れることができ、自分の考え方や向かうべき方向について広い視野をもって考えられるようになりました。

また医療ガバナンス研究所に出入りする学生に出会い日々活動する中で、行動力やパッションのある方が多く非常に刺激を受けました。私はこれから大学で学ぶことに加え、今回のインターンで学んだことを心に刻み医学生、そして一医療者として幅広い選択肢の中から自分なりの色を見つけ今後更に成長していきたいです。

上先生をはじめ2週間インターンをさせていただいた医療ガバナンス研究所の皆さま、そして今回のインターンでお世話になって皆さまに心から感謝申し上げます。今後とも引き続きご指導くださいますようよろしくお願い申し上げます。

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自治医科大学医学部医学科6年

加藤直人

1.医療ガバナンス研究所に来たきっかけ

私の在籍する大学には、一定の基準を満たした学生を対象に6年時の国家試験対策講義と卒業試験を免除し、7ヶ月の間自由に実習先や実習内容を決めることを許可する制度があります。私はその制度を利用して、医療者に限らず様々な方と出会うことと、卒後臨床研究ができるよう論文を書くことなど、病院外での経験を求めてインターネットで「医学生 インターン」と検索しました。それで上位にヒットしたのが、医療ガバナンス研究所です。ネット上では褒められも叩かれもしていましたが、実際に見てみないと本当のところは分からないと考えて、勢いで1ヶ月のインターンを申し込みました。

 

2.インターン中の出来事や思い出

医療ガバナンス研究所に来る前は、上先生に対して、なぜこれほど実績のある人がいわゆる「出世」の道に進まずにNPOなんてやってるんだろう、と疑問に思っていました。しかし初日に上先生とお話しさせていただいて気付きました。上昌広という個人として実力があるからこそ、組織に迎合することなく自身の意図に従った活動ができるのです。私は将来について漠然と、厚生労働省やWHOなどの保健機関で働くのもいいなと考えていました。そこに上先生のWhyの質問攻めに遭い、自分が何をしたいのかよく分からなくなってしまいました。今思えば、それらがどんなものかよく知らないのだから、ちゃんと考えるとよくわからなくなるのは当然かもしれませんが、当時はショックを受けました。「今の君に必要なのは、視野を拡げることです。一流の人材に会うことです。」という言葉をいただき、まずは先生方の仰る言葉を素直に受け取り、考える力を養うことを決意してインターンが始まりました。

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インターン初日

3.インターン中の活動内容

医療ガバナンス研究所には、上先生独自の人脈で様々な一流の方がおいでになります。

「今日来た全員とLINE友達になって、君がグループを作りなさい。」と仰る上先生のおかげで、貴重なご縁をたくさんいただきました。例えば、東京大学剣道部OB会に同伴させていただいた際にお会いした小田知宏さんはNPO法人発達わんぱく会の設立者であり、理事長です。小田さんのお話に興味を持った私はすぐにアポを取り、浦安市の教室を訪れました。遊びの小道具はスタッフさんの手作りで、発達や障がいの程度によって同じ目的でも少しずつ変えるそうです。プレイルームの内装は、子どもに不必要な刺激を与えないようにあえてシンプルにしていました。こういった学びは、自分の目で見て初めて気づくことのできるものです。現場に足を運び、机上の空論ではなく実体験から学ぶ重要性を強く実感した経験でした。

 

その他、私の地元である山形県で土建業を営む前田直之さん、福島で原発事故後の健康影響調査を続ける坪倉正治先生など、たくさんのプロフェッショナルを訪れました。また上先生にご縁を繋いでいただき、これから訪問させていただく方もたくさんいらっしゃいます。まだまだ出会いが広がっていくことがとても楽しみです。

 

4.インターン中に学んだこと

毎日学ぶことばかりでとても上げきれませんが、今後の人生に深く関わりそうだと考えたものをいくつかご紹介します。

 

【人との接し方】

・相手の「内在的価値観」を知っておくこと

内在的価値観とは、その人が生まれ育った環境、集団で歴史的に引き継がれている価値観のことです。自覚がなくても個人はその影響を受けているとされます。例えば戊辰戦争で勝利し、明治維新後日本の中心となった薩長土肥は、現代でも政界や科学界に数々の著名人を輩出しています。山口県を例に挙げると、先日演説中に銃撃され死亡した安倍晋三氏の生まれ故郷であり、選挙区です。憲政史上の首相在任日数の上位4名は、安倍晋三、桂太郎、佐藤栄作、伊藤博文であり、山口県出身者が独占しています。また総理候補として都度名前が挙がる林芳正氏の選挙区も山口県です。ノーベル賞受賞者の本庶佑氏も山口県で育ちました。前述の坪倉先生も、両親は山口県の出身です。なぜ、山口には政界や科学界のリーダーが多く生まれるのでしょうか。これには吉田松陰と松下村塾の門下生たちに由来する「いけいけどんどん」の内在的価値観があると上先生から教わりました。その価値観は、当時絶対的な権力を持っていた江戸幕府を相手に戦い、勝利した具体的な成功体験に基づきます。つまり自分達は動けば偉業を成せるという成功イメージが育まれているのです。1842年創立の松下村塾で醸成された内在的価値観が、地域で脈絡と受け継がれ、現代の若者にも影響を与えているというのは俄には信じ難いことでした。しかし大学で全国から集まった学生と関わる中で人柄の地域性には傾向があると感じていた私にとっては、ある意味で腑に落ちる話でもありました。

 

【社会への働きかけ方】

・肩書きでなく、固有名詞を使うこと

実際に物事を動かしているのは、肩書きの奥にいる固有名詞の人間です。例えば、前述の東大剣道部OB会で吉添圭介さんという(当時)内閣府地方分権改革推進室の参事官(総括)を務められていた方とお会いしました。学生時代の泥臭い(酒臭い?)青春のお話をお聞きして、その人間性に惹かれました。アポを取り、内閣府を訪問させていただきました。霞が関に足を踏み入れたのは初めてでしたが、そこで働く人の顔がバラバラだったのは、当たり前ですがやけに印象深かったのを覚えています。職員食堂で「お財布応援企画」の500円ランチの看板を発見してさらに親近感が増しました。国家といえども、結局は固有名詞の人の集まりであることを実感しました。

 

【臨床研究について】

・流れを読むこと

引き出しを増やすこと:新聞や週刊誌を読むこと。歴史を知ること。今回The New England Journal of Medicineの、戦争から帰還した兵士の脳症に関する論文に対するLetterを投稿しました。上先生に初めに指示されたのは、ハート・ロッカー、ブラックホーク・ダウンといった戦争映画の鑑賞でした。オリジナリティを出すことより先に、自分に引き出しを作ることが重要であると知りました。

発信の機会を増やすこと:学生のうちはネタも出力もコネもないので、いきなり素晴らしい論文を仕上げて一流雑誌に載せようとは思ってはいけないと教わりました。まずFacebookのような身近なところで文章を書く。ひたすら書く。そうして着々と発信力を上げていくことが重要です。

 

・患者さんにとっての関心ごとを中心に据えること

検査結果でなく、症状や生活への影響に注目すること:上先生が論文や記事や論文をお書きになる一方で、患者さんをしっかり診ていることが意外でした。患者さんを診ている限り「ローリスク」で、患者さんを診なくなるほど本質から離れていってしまうということです。

最終的に患者さんに還元されること:自分がしたい研究だけすれば良いのではありません。プロの医療者としては、患者さんや社会が求めている研究をすることにより価値があるのです。

 

・論文に適した英語を使うこと

日本語の原稿ができてから、また別の勝負が始まりました。受験では満点をもらえる英訳をしても、「論文ではこんな言い方しない」とボツになるのが悔しかったです。一つ一つ調べて修正していく地道な作業でした。

 

 

私の大学は、全員が地域枠のような形で僻地医療に従事するという制度のもとで運営されており、学生同士や大学、都道府県庁との繋がりが非常に強いことが特徴です。これは僻地の医療水準を一定に保つためには有効ですが、一方で「長いものに巻かれる」のが吉という風潮に繋がり、個人としてのアイデンティティを育てにくい環境でもあると考えています。

上先生はもちろん、研究所に出入りしている他の学生さんたちも、製薬マネーやワクチンに関する研究、機械学習など何らかの強みを持った実力者が勢揃いしていました。良くも悪くもバランス型の私と比較した時、自身にもの足りなさを感じ悔しい思いをしたことを覚えています。僻地で総合診療をするにしても、自身のアイデンティティを確立していくことの重要性を実感しました。

「診療して、調べて、書く。」この繰り返しで医療者として上達していくと上先生はよく仰ります。インターン中は、インプットだけでなくFacebookの投稿やNEJMのレターなど、文章を書くことにも力を入れました。これからも発信を続けていき、診療と臨床研究の両輪で自身のアイデンティティを活かして専門家として生きていきたいと考えています

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「ニュースの職人」鳥越俊太郎さん。

「毎日、笑顔で前向きに生きる」ことを教わりました

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『街道を行く』を聞き流しながら、上先生執筆記事の校正作業中。

「内在的価値観」学習のため、映画やドキュメンタリーも観ました。

5.医療ガバナンス研究所でのインターンを考えている学生に一言

医療ガバナンス研究所にいらっしゃる先生方は、間違いなく超一流の実力をお持ちです。それでも、自分のような縁もゆかりもない学生に対して非常に熱心に、人生の核心に迫るような指導を時間をかけてしてくださいました。

私はこの1ヶ月で、本当に人生が変わったと思っています。それは、テクニカルなスキルや単なる知識ではなく、人とのご縁であり、物事の考え方です。医療ガバナンス研究所は、いわゆる魚を与えるのではなく魚の釣り方を教える場所です。勇気を持って一歩踏み出した人にのみチャンスは訪れます。視野を広げたい、色々な分野の一流の人と会いたいという方には、医療ガバナンス研究所でのインターンをおすすめします。

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秋田大学医学部医学科6年

宮地貴士

当事者の視点、相手のニーズを第一に考える重要性を学びました

医療ガバナンス研究所に来たきっかけ

私は大学3年生の頃からアフリカ・ザンビア共和国での医療支援プロジェクトに取り組んでいました。その活動報告会を都内で開いた際に、とある参加者の方が「力を貸してくれる先生がいる」といって上昌広先生を紹介してくれました。

 

医療ガバナンス研究所でのインターンの出来事や思い出

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上研究室で

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ザンビア共和国・マケニ村にて

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インターン初日に行われた上先生との面談は今でも強烈に印象に残っています。ザンビアでは無医村に住む住民の健康を支えるために診療所の建設を進めていましたが、現地パートナーとの軋轢などがあり、プロジェクトが宙ぶらりんな状態になっていました。当時の私は、ザンビアでの事業がうまくいかないことに対して政治の腐敗や医療制度の問題を取り上げていました。それを聞いた上先生から一言、「事業は人と一緒に進めるものだよ。君は現地の誰と一緒に取り組んでいるの?」。まさに痛い所を突かれました。現地の保健局や非営利組織と連携はしていたものの、担当者が変わることなどが頻繁にあり、現地で責任をもってプロジェクトを動かしていく人がいなかったのです。「この先生には嘘はつけない」そう思い、先生がどのような人と共にプロジェクトに取り組んでいるのか、学ばせていただくことにしました。

 

医療ガバナンス研究所での活動

上先生からは「君はザンビアという“国”や制度の問題とかを言っているから、実際に“国”を動かしてきた方の話を聞いた方がいい」といって佐藤慎一さんを紹介してくれました。元財務省事務次官としてB型肝炎訴訟や東日本大震災後の復興に向けて最前線で活動してきた方です。佐藤さんの話は目から鱗でした。「国なんてものはないのだ。結局は国民一人一人がどう考えるかだ」。そんな考えの佐藤さんが財務省を退職後、全力で向き合っている課題が日本における租税抵抗でした。「長年、税の現場で働いていて日本人はなぜ税金に反対するのか。なぜ納得してくれないのか。ずっと違和感があった。日本人の価値観に腹落ちする税制とは何なのか。歴史をさかのぼって明らかにしたい」。私は佐藤さんの研究をお手伝いさせていただくことにしました。「日本人が増税に反対するのは、政府を信用していないからだ。特に戦争を経験した世代には強い国家不信がある」。佐藤さんの示唆に富む分析を下に医療ガバナンス研究所の津田健司先生、瀧田盛仁先生、谷本哲也先生、上昌広先生と共に「政府の公衆衛生事業であるワクチン接種も消費税と同じで、政府への信頼が関係しているのではないか」と仮説を構築、各国別のワクチン信頼度と消費税率に関する相関を調べ、The Lancetに通信(Correspondence)として発表しました。現在は、2011年の東日本大震災後に租税抵抗の強い日本でなぜ復興増税が導入できたのか、その背景にある日本人の深層心理を分析し、新型コロナウイルス対策に生かせるのではないかと考え研究を進めてきます。

医療ガバナンス研究所で学んだこと

当事者の視点、相手のニーズを第一に考える重要性を学びました。上研には医療界に限らず、 “かっこいい大人たち”が集まっています。政治や行政、スポーツやビジネスなど各分野で一流と呼ばれる人たちです。皆さんのお話を伺っているとある共通点が見えました。それは、お客さんや支援者、患者さんなど自分だけの“ファンクラブ”を抱えており、組織の論理などに振り回されずに自立しているということです。自分で手と足を動かし稼いだ情報はどれもリアルで決してネットに転がっている話ではありませんでした。私も、将来は上研で学んだことを生かし、どんな場所で働くことになっても、その土地に住む住民のニーズを掴み、最適な医療サービスを提供していきたいです。

 

医療ガバナンス研究所でのインターン考えている学生に一言

インターンとして何をやるのだろう?と感じる方も多いと思いますが、いきなり研究や調査活動などに参加するのではなく、まずは先生方の“カバン持ち”として武者修行が始まります。私は研究室のスタッフの方からお茶出しの仕方を一番初めに教えてもらいました。(笑)音を立てないお盆の使い方、コップを置く位置など意外に奥が深く、“おもてなし精神”の重要性を学びました。早速教わったことを生かし、先生たちのミーティングにお茶出しとして顔を出し、挨拶をして、お話を伺う。こんな感じでインターンは始まっていきます。決して敷居は高くないので、少しでも興味があれば気軽に連絡してみてください。

 

主な業績

1.研究活動
1) Miyachi T, Ozaki A, Saito H, Sawano T, Tanimoto T, Crump A. Opioids: A 'crisis' of too much or not enough - or simply how rich you are and where you live?. Eur J Pain. 2021;25(6):1181-1194. doi:10.1002/ejp.1767
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33822443/

2) Miyachi T, Tanimoto T, Kami M. Evaluation of modelling study shows limits of COVID-19 importing risk simulations in sub-Saharan Africa. Epidemiol Infect. 2020;148:e113. Published 2020 Jun 9. doi:10.1017/S095026882000120X
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32513346/

3) Miyachi T, Takita M, Senoo Y, Yamamoto K. Lower trust in national government links to no history of vaccination. Lancet. 2020;395(10217):31-32. doi:10.1016/S0140-6736(19)32686-8
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31908281/

4) Miyachi T, Nomura K, Minamizono S, et al. Factors Associated with Insomnia Among Truck Drivers in Japan. Nat Sci Sleep. 2021;13:613-623. Published 2021 May 18. doi:10.2147/NSS.S307904

5) Wada M, Ozaki A, Miyachi T, Tanimoto T, Crump A. Pharmaceutical good manufacturing practice: Leuplin® production in Japan identifies major international shortcomings. Invest New Drugs. 2021;39(4):1167-1169. doi:10.1007/s10637-021-01080-y

2.メディア出演
2.1 ハフポスト日本版
秋田の無医村 「嫉妬」が引き起こす医療崩壊―所得格差と、「医師=万能」という誤解が医師と村民を分断する―
URL:https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5ce5eb35e4b0547bd132133f

 

2.2 AERA dot.
休学してザンビアの無医村に診療所を設立 国際化へ舵を切る医学生たち
URL: https://dot.asahi.com/aera/2020022800015.html

 

2.3 Lifepedia
Vol.29 「ザンビアでは胃カメラですら2か月待ちとかなんです。いずれは日本並みの医療水準にしたいです。」
URL: https://lifepedia2021.com/2021/03/29/vol-29/

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高校1年生

藤井聡子

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私が初めてインターンとして活動させていただいたのは、中学二年生の時、シンポジウムの会場での案内係としてでした。

もともと上先生とは両親が東大剣道部時代からお付き合いいただいていたこともあり、幼い頃からよく研究室にお邪魔していましたが、その年は自分と同い年の中学生二人がインターンとして参加しているのを知り、私もメンバーに加えていただきました。  

 

会場では様々なテーマについて現場の第一線で活躍されている方のお話を聞かせて頂きました。もちろん私には理解が難しい話も多くありましたが、参加者の方々の対話を生で聞くことができて本当に刺激になりました。私が最も衝撃を受けたのは沢山の方々がお話の後に質問を投げかけていたことです。他者の話を自分の中で消化し、経験や情報と繋げ、そこにいる全員とさらに深い議論をするということが当たり前な光景を目の当たりにし、自分の学ぶ姿勢を見直す機会になりました。  

 

その後、学校の仲間、他校に通う医学に関心のある友人とともに研究室にお邪魔したときには、東京大学医科学研究所の先生にゲノム編集技術についてのご講義をいただき、今までほとんど知らなかった世界の入り口を覗くことができました。ゲノム編集の発想やその発展のスピードに驚かされ、自分の想像も及ばない世界が存在するのだということに改めて気づきました。同時に、研究が世界中で進んでいるという大きな視点から、遺伝子にフォーカスするミクロの視点にまで触れられたことは、自分の視野を広げることにも繋がりました。

 

研究所でのインターンは、学習に対する意識や自分の行動に今までになかった視点で向き合う機会を頂ける場であると思います。吸収することに溢れた環境に感謝し、これからも成長していきたいです。

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伝説のポケモン級の先生たちと一緒に経験値大幅アップのチャンス!

1.医療ガバナンス研究所に来たキッカケ

2016年8月、大学1年生の夏休みに日本に帰国した際、首都圏でコンビニクリニックを展開している「ナビタスクリニック」の理事長、久住英二先生に紹介していただきました。欧州の大学医学部に進学している学生の記事を久住先生がFacebookで紹介され、「もし記事を書いてみたい人がいましたら、連絡してください」とあり、私から連絡差しあげたことがきっかけです。

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スロバキア・コメニウス大学卒EU医師

妹尾優希

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上研究室で

2.医療ガバナンス研究所でのインターンの出来事や思い出

私が初めて上研究室を訪問した2016年8月、上昌広先生との面談中に福島についてどんなイメージを持っているか尋ねられました。2011 年 3 月 11 日、私はニュージーランドの中高一貫校に留学していました。その為私は福島について、現地メディアが当時報道していた、原発事故や津波被害による福島県の変わり果てた様子や、放射能汚染の妊婦や乳児への影響に関する報道の印象をそのまま持っており、漠然と福島の人々は被ばくによって、発達障害やがんなどの健康被害を受けていると考えていました。

 率直にそう伝えた際に、上先生は訂正することなく、「自分の目で見ておいで」と、原発事故後、浜通りで内部被ばく検査や二次的な健康影響に関する調査をされている坪倉正治先生に連絡し、福島県を訪問する機会を設けてくださいました。

福島訪問では、坪倉先生に同行させていただき、南相馬市立総合病院や相馬中央病院での診察や、内部被ばく検査の様子を見学しました。見学を通して、福島県に住む方の内部被ばく量が想像より大幅に低いことを知りました。また、頻繁に飛行機に乗る私の内部被ばく検査で得られたカリウム40の値の方が、地域住民の方々より高いことを実際に自分の目で確認し本当に驚きました。見学中に見せていただいた、住民の方のアンケートからは、住民の方の放射線個人被ばく線量が福島県内での外出時間の長さや食べている農産物の産地とほぼ関係がないこともわかりました。さらに、これは福島県内の農産物に対する徹底した放射能検査のおかげであることも知りました。

初めての福島訪問は、「自分の目で見て、調べて、確かめる」ことの重要さや、こうした無知・無関心が福島県の方々が苦しむ風評被害の一因となっていたことを痛感する貴重な経験となりました。

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上昌広先生と

3.医療ガバナンス研究所での活動

医療ガバナンス研究所のインターンでは主に、研究所の先生方の論文執筆のお手伝いや、レターと呼ばれる文量の少ないタイプの論文投稿などをしています。

初めて、論文執筆のお手伝いをさせていただいたのは、女性の貧血対策の研究に取り組まれている山本佳奈先生の、米国医師会誌(Journal of the American Medical Association)上で産科系の論文掲載数が増加していることを分析した論文です。最初は、Excelの使い方もよくわからず、EndnoteやPubmedの存在すら知らない中、山本先生や常磐病院(福島県いわき市)の谷本哲也先生、瀧田盛仁先生、尾崎章彦先生にメッセンジャーやスカイプを通して丁寧に教えていただきました。この研究は2018年10月にCurerusという医学誌に掲載され、自分の名前を連ねさせていただいた時は、本当に嬉しかったです。

また、今となって考えればとんでもない話ですが、初めて自分が筆頭著者となり投稿した論文は、「毎日世界中から何千もの論文を受け取っている編集部が、引用文献の内容チェックなんかするわけないだろう」と考え、形式を揃えないどころか、番号すらいい加減につけていました。

私の至らなさで、投稿締め切りギリギリの早朝3時にお電話したり、何度チェックしても「.」「スペース」の位置などの小さなミスが治せていなかったり、締め切りに間に合わなかったりと、ご迷惑を多々おかけしているにも関わらず、本当に優しく辛抱強くご指導いただいています。紆余曲折ありますが、学生の間に自分が筆頭著者の論文が4報、共著論文がさらに12報発表しました。そして、これら全16報が米国国立医学図書館データベースPubmed掲載されていることは私の自慢です。

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大学のクラスメート

尾崎章彦先生と

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4.医療ガバナンス研究所で学んだこと

一般論を書かないファクトベースの文書の書き方と、読み手のことを考えた文章の書き方について、ご指導いただいています。初めて書いた記事は、1500文字程度の体験記だったのですが、初稿から完成まで3ヶ月ほどかかりました。その後も、MRIC、新聞の読書投稿欄、Web媒体の記事、学術誌のコラムなど様々な媒体に寄稿する機会をいただき、誰が読んでいるのか、誰に何を伝える文書なのか、誰が寄稿記事の採用しているのかを考えて記事を書くことをご指導いただきました。

また、記事を書く為に、「自分自身のことについてよく知り、他人や他の土地との違いや共通点を探す」ことをご指導いただいています。その為に、自分のアイデンティティとなる郷土の歴史や特徴、留学先であったニュージーランドやスロバキアについてよく調べ、深堀りとアップデートを常に行うことをご指導いただいています。

ついつい怠りがちで、とっさに尋ねられた人口など基本的なことが出てこなくなってしまうことも多々あり、一進一退ではありますが、めげることなく地道に邁進してまいりたいと思います。

 

5.医療ガバナンス研究所でのインターン考えている学生に一言

社会人に近づくにつれ、時間を投資してくれる大人、いい加減なことを言った時に見逃さず本気でボコボコにしてくれる大人は少なくなると実感しています。上昌広先生をはじめとする上研究室にいらっしゃる方々は、いわば伝説のポケモン級の方々ばかり。

ぜひ、経験値大幅アップのチャンスをお見逃しなく!

勉強会の様子

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6.主な業績のリスト

論文実績(2021年8月12日現在発表済みの論文)

1) Pharmaceutical company payments to authors of the Japanese guidelines for the management of hypertension. Senoo Y, Saito H, Ozaki A, Sawano T, Shimada Y, Yamamoto K, Suzuki Y, Tanimoto T. Medicine. 2021; 100 (12):e24816. doi: 10.1097/MD.0000000000024816

2) Association between COVID-19 morbidity and mortality rates and BCG vaccination policies in OECD countries. Senoo Y, Suzuki Y, Tsuda K, Tanimoto T, Takahashi K. Journal of Infection Prevention. 2021;22(2):91-93. doi:10.1177/1757177420976812

3) Prioritizing infants in a time of Bacille Calmette-Guérin vaccine shortage caused by premature expectations against COVID-19. Senoo Y, Suzuki Y, Tsuda K, Takahashi K, Tanimoto T. [published online ahead of print, 2020 May 22]. QJM. 2020;hcaa179. doi:10.1093/qjmed/hcaa179

4) The Proportion of Female Physician Links With Advanced Educational Opportunity for Female and by Female. Yuki Senoo, Morihito Takita, Akihiko Ozaki, Masahiro Kami, IJHPM, 2020 Jan, doi 10.15171/ijhpm.2019.147

5) Yamamoto, K., Ozaki, A., Senoo, Y., Sawano, T., Tanimoto, T., Sah, R., & Wang, J. (2020). Underperformance of Reverse-Transcriptase Polymerase Chain Reaction in Japan and Potential Implications From Diamond Princess Cruise Ship and Other Countries During the Ongoing COVID-19 Pandemic. International journal of health policy and management, 9(11), 498–500. https://doi.org/10.34172/ijhpm.2020.109

6) Ozaki A, Senoo Y, Saito H, Crump A, Tanimoto T. Japan's Drug Regulation Framework: Aiming for Better Health or Bigger Profits?. Int J Health Policy Manag. 2021;10(1):47-48. Published 2021 Jan 1. doi:10.34172/ijhpm.2020.56

7) Uprety A, Ozaki A, Senoo Y, et al. Flood damage in Nepal exacerbated by underlying conflict with India. Lancet Planet Health. 2017;1(9):e351-e352. doi:10.1016/S2542-5196(17)30159-6

8)  Sawano T, Takita M, Senoo Y, Nishikawa Y, Crump A, Tsubokura M. The responsibility of the Japanese Media, The Fukushima accident & the use of personal data for research [published online ahead of print, 2019 Jul 27]. QJM. 2019;hcz193. doi:10.1093/qjmed/hcz193

9) Miyachi T, Takita M, Senoo Y, Yamamoto K. Lower trust in national government links to no history of vaccination. Lancet. 2020;395(10217):31-32. doi:10.1016/S0140-6736(19)32686-8

その他の活動:

  • 2018年1月よりMRIC Global 編集者として寄稿文の編集、福島民友で掲載中の坪倉先生の放射線教室の英訳を担当。

  • 2018年2月より日本原子力学会誌「AtomoΣ(アトモス)」のコラム欄を毎月連載。

  • 2019年5月より「m3」のメンバーズメディアにて、「スロバキアの現役医学生がみた医療教育」と「ただいま日本。東欧帰りひよっこ医師の日常」にて、スロバキアや東欧の医学部事情や日本帰国後、福島での病院実習で得た学びと気づきに関するコラムを毎週連載。

  • 幻冬舎オンライン、プレジデントオンライン、ハフィントンポストなどに掲載記事多数。

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東北大学医学部医学科4年

村山安寿

1.医療ガバナンスでインターンをしたキッカケ

私が初めて上研を訪れたのは高校一年の春(2015年5月)でした。当時の私はWHOなどの国際機関や国際保健学に興味があり、そのことを日頃よりお世話になっていた弁護士の内野令史郎先生にお話ししたところ「ぜひ会わせたい先生がいる。」と上先生を紹介いただきました。高校在学中は上先生の研究室に年1~2回ご挨拶に伺う程度でしたが、大学1年生の春休み中に研究室に伺った際に1週間くらい研究室でインターンをしないかと声をかけていただいたことがキッカケとなり、現在のように本格的に医療ガバナンス研究所で修行しています。

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2.医療ガバナンス研究所での経験や思い出

初めて上先生とお会いした時のことは今でも強烈に覚えています。正直なところ高校一年生の私は知識と教養が全く足りないことで、上先生の話しの99%は何を仰っているのかわかりませんでしたが、日本にはこれほどまでに強烈な大人がいるんだと知り、驚愕しました。

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次に医療ガバナンス研究所でインターンしたのは大学1年の春休みでした。そのころの私は、これでもかと時間を無駄に浪費していました。高校生の頃から公衆衛生学や国際保健学に興味があり、公衆衛生大学院があるからという理由で入学した東北大学で、入学した当初は公衆衛生学を研究されている数人の教授にメールして何度か研究室に訪れ、どんな研究をしているか、私にも参加させていただける研究はないかなど聞いて回りましたが、一言で公衆衛生と言っても研究テーマは幅広く、不勉強な大学一年生だった私には、そもそも今どんな課題があって、何が未知の研究テーマで、東北大学の各々の研究室ではどんな研究をしているかなど全く知りませんでした。中村祐輔先生や小松秀樹先生などその他先生方が仰るところの「火事場泥棒」として有名な「東北メガバンク機構」についても「何をしているかはよくわからないが、世界一のスーパーコンピューターがあるらしい」としか知りませんでした。

3.医療ガバナンス研究所での活動

私が初めて研究に関わらせていただくようになったのは大学2年生の4月ごろでした。春休み医療ガバナンス研究所でインターンをしている際にお会いした仙台厚生病院消化器内科医の齋藤宏明先生からピロリ菌のスクリーニング調査に関するシステマティックレビューに関する研究をお手伝いさせていただいたことでした。その後、本格的に研究活動を始めたのは、常磐病院で乳腺外科医として活躍されている尾崎章彦先生から皮膚科診療ガイドライン著者の製薬マネー調査を任せていただいてからでした。これは日本皮膚科学会が発行する病気ごとの診療ガイドラインを作成した医師たちが製薬企業からいくらお金をもらっているか調べた研究です。研究や論文など読んだこともなく、本当に右も左もわからない状態からのスタートでした。

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皮膚科診療ガイドラインの調査では、ガイドライン著者の名前や性別、所属などをインターネットで検索し、製薬企業が公開する医師への支払いをまとめたデータベースから金額を抽出するところから始まりました。データ抽出が終われば、次は金額の解析を行いました。製薬企業から謝礼金をもらったことがある医師の人数や金額の平均値、中央値などの基本統計量から解析をはじめ、最終的には重回帰分析などのより高度な解析を行い、先行研究を読み込んで得られた結果の解釈を行います。このような一連の研究の流れは尾崎先生を筆頭に谷本哲也先生、齋藤先生、上先生から手取り足取り教えていただきました。こうして何とか1本完成させ、その後の厳しい査読などを経て、この調査の詳細はPLOS One誌より発表しました。一つ完成すれば、あとはひたすら反復練習するのみです。これまでに皮膚科、泌尿器科、耳鼻科、肝臓内科、血液内科などの診療ガイドライン著者に対する製薬マネー調査に参加させていただき、現在も腎臓内科、糖尿病内科、膠原病内科、腫瘍内科、代謝・内分泌内科、循環器内科・心臓血管外科、精神科、感染症内科などなど複数の診療科の製薬マネーを同時並行で調査しています。

 

また、製薬マネー研究に関わり始めて早くも2年経ち製薬マネーに関してこれまでに15報以上の論文を発表・投稿してきましたが、それに伴い私の中で製薬マネーに対する意識も大きく変わってきました。最初は学生でも主体的に研究を行うことができ、かけた時間の分だけ論文中のディスカッションの深みや執筆本数を増やすことができるため、目に見える形で自分の成長が実感できることにやりがいを感じていました。しかし、最近は自分の力や業績を上げたいということよりも、今の製薬マネー研究をどうしたら実際の患者さんや一般の人々の為に活かせるかと考えるようになりました。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校のColette Dejong先生の研究やハーバード大学のJames Yeh先生の研究で示されているように、医師の処方パターンは製薬企業からの無料のお弁当と関係あることがわかっています。また、医療ガバナンス研究所とTansaが共同で行った調査(査読中)によると製薬企業社員またはその家族の実に90%は「製薬企業からの接待は医師の処方に影響を与えている」と答えた一方で、70%は「製薬マネーは非倫理的ではない」と答えています。つまり製薬企業関係者は自らの接待で医師の処方を変えているがそれは問題ないと考えていることがわかります。しかし、私たちが行った別の研究(査読中)によれば、日本人がん患者会員の大多数が「医師は製薬企業からの接待を受けるべきではない」、「製薬企業からの接待は問題がある・非倫理的である。」、「不必要な処方が増え、医療費の増大につながっている」、「製薬企業の接待によって影響を受けるのではなく、医師自身が正しいと思う治療を患者さんにしてほしい」と望んでいました。患者さんの思いとは明らかに乖離がありました。

また、私は診療ガイドラインを作成した医師が製薬企業から受け取った謝礼金の金額と、その診療ガイドラインのエビデンスの高さ・推奨の強さ・薬の使用に対する推奨のトーンの関係性を調べています。現在執筆中の日本腎臓学会が作成した「エビデンスに基づくCKD(慢性腎不全)診療ガイドライン 2018」では実に75%の推奨がレベルC(弱い)またはD(非常に弱い)のエビデンスに基づいていました。つまり、日本の慢性腎不全治療の75%はちゃんとした臨床試験結果ではなく、ガイドラインを作成した専門家の個人的な見解をもとにしているわけです。このような専門家の意見というのは製薬企業からのお金によって容易に影響されます。そのため、厳格な利益相反管理が必要であり、米国やイギリス、フランスなどを筆頭に先進諸国ではこの20年間で厳しい利益相反規約を作成してきました。しかし、日本腎臓学会の利益相反規約は他の先進諸国の学会よりも明らかに緩い規約を作成しており、その緩い学会規約さえ逸脱した利益相反管理をCKDガイドラインでは行っていました。(現在原稿執筆中)このようなエビデンスレベルの低いガイドラインを「エビデンスに基づく診療ガイドライン」という名を冠し、利益相反管理を徹底していると公言する日本腎臓学会には脱帽です。このようないい加減な治療推奨によって不利益を被るのは患者さんのはずです。私にできることは少ないかもしれませんが、少しでも患者さんのためになればと思ってこのような研究を続けています。

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4.医療ガバナンス研究所で学んだこと

私が医療ガバナンス研究所で学んだことすべてを書くことは文字数が足りませんが、特に大事なことは自分の頭で考え、できるだけ早く行動し、とにかく挑戦することだと思います。製薬マネー研究をやっている中でよく感じることですが、学生の最大の強みは身軽さと行動力だと思います。JAMAやNew England Journal of Medicine、Lancet、BMJなどのいわゆるトップジャーナルと呼ばれる科学誌に継続的に研究結果を掲載している研究者と比べて、私は教養も知識も経験も劣りますし、有名大学の優秀な大学院生が何十人もいるような研究室でもないですし、アメリカを研究基盤とする地理的有利性もないので、まともに勝負してもほとんど勝ち目がありません。そんな研究者を相手にして唯一勝ち目があるとしたら、彼らの論文を読み込み見逃しているテーマを見つけ、できるだけ早くその研究を行うことだと思っています。つまりスピード感と行動力を持つことが最も大切で、そのスピードと行動の行き先を示してくれる尾崎先生や谷本先生、上先生などの方々がこの研究所にはいらっしゃいます。私自身、実際にインターンをしているとこのことを強く実感する経験を何度もしてきました。

 

5.医療ガバナンス研究所でのインターン考えている学生に一言

他の学生インターンの方々も書いていますが、もし興味があればとりあえず気軽に門戸を叩いてみるが一番だと思います。何でもやらない理由はいくらでも思いつきますが、チャンスがあるのに飛び込まないことほど勿体ないものはないはずです。

 

6.主な業績のリスト

論文実績(2021年8月21日現在発表済みの筆頭著者の論文)

  1. Murayama, A., Kida, F., Ozaki, A., Saito, H., Sawano, T., & Tanimoto, T. (2021). Financial and Intellectual Conflicts of Interest Among Japanese Clinical Practice Guidelines Authors for Allergic Rhinitis. Otolaryngology--head and neck surgery : official journal of American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery, 1945998211034724. Advance online publication. https://doi.org/10.1177/01945998211034724

  2. Murayama, A., Ozaki, A., Saito, H., Sawano, T., Shimada, Y., Yamamoto, K., Suzuki, Y., & Tanimoto, T. (2020). Pharmaceutical company payments to dermatology Clinical Practice Guideline authors in Japan. PloS one, 15(10), e0239610. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0239610

  3. Murayama, A., Ueda, M., Shrestha, S., Tanimoto, T., & Ozaki, A. (2021). Japan's conditional early approval program for innovative cancer drugs: Comparison of the regulatory processes with the US FDA and the EMA. Cancer cell, S1535-6108(21)00385-8. Advance online publication. https://doi.org/10.1016/j.ccell.2021.07.008

  4. Murayama, A., Ozaki, A., Saito, H., Sawano, T., Sah, R., & Tanimoto, T. (2020). Coronavirus disease 2019 experts appearing on Japanese television: their characteristics and financial conflicts of interest with pharmaceutical companies. Clinical microbiology and infection : the official publication of the European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases, S1198-743X(20)30751-5. Advance online publication. https://doi.org/10.1016/j.cmi.2020.12.002

  5. Yamamoto, K., Murayama, A., Ozaki, A., Saito, H., Sawano, T., & Tanimoto, T. (2021). Financial conflicts of interest between pharmaceutical companies and the authors of urology clinical practice guidelines in Japan. International urogynecology journal, 32(2), 443–451. https://doi.org/10.1007/s00192-020-04547-3

  6. Murayama, A., Senoo, Y., Harada, K., Kotera, Y., Saito, H., Sawano, T., ... & Ozaki, A. (2021). Awareness and perceptions among members of a Japanese cancer patient advocacy group concerning the financial relationships between the pharmaceutical industry and physicians: a mixed-methods analysis of survey data. medRxiv. https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.06.26.21259442v1

  7. Hanano Mamada, Anju Murayama, Akihiko Ozaki, Takanao Hashimoto, Hiroaki Saito, Toyoaki Sawano, Divya Bhandari, Sunil Shrestha, Tetsuya Tanimoto. (2021). Financial and Non-financial Conflicts of Interest Among the Japanese Government Advisory Board Members Concerning Coronavirus Disease 2019. medRxiv 2021.09.12.21263442; doi: https://doi.org/10.1101/2021.09.12.21263442

 

論文実績(2021年8月21日現在発表済みの共著論文)

  1. Kida, F., Murayama, A., Saito, H., Ozaki, A., Shimada, Y., & Tanimoto, T. (2021). Pharmaceutical company payments to authors of the Japanese Clinical Practice Guidelines for Hepatitis C treatment. Liver international : official journal of the International Association for the Study of the Liver, 41(3), 464–469. https://doi.org/10.1111/liv.14761

  2. Sawano, T., Kotera, Y., Ozaki, A., Murayama, A., Tanimoto, T., Sah, R., & Wang, J. (2020). Underestimation of COVID-19 cases in Japan: an analysis of RT-PCR testing for COVID-19 among 47 prefectures in Japan. QJM : monthly journal of the Association of Physicians, 113(8), 551–555. https://doi.org/10.1093/qjmed/hcaa209

  3. Ozaki, A., Murayama, A., Saito, H., Sawano, T., Harada, K., Senoo, Y., Yamamoto, K., & Tanimoto, T. (2021). Transparency Is Not Enough: How Can We Improve the Management of Financial Conflicts of Interest Between Pharma and Healthcare Sectors?. Clinical pharmacology and therapeutics, 110(2), 289–291. https://doi.org/10.1002/cpt.2126

  4. Harada, K., Ozaki, A., Saito, H., Sawano, T., Yamamoto, K., Murayama, A., Senoo, Y., & Tanimoto, T. (2021). Financial payments made by pharmaceutical companies to the authors of Japanese hematology clinical practice guidelines between 2016 and 2017. Health policy (Amsterdam, Netherlands), 125(3), 320–326. https://doi.org/10.1016/j.healthpol.2020.12.005

  5. Ueda, M., Tanimoto, T., Murayama, A., Ozaki, A., & Kami, M. (2021). Japan's Drug Regulation During the COVID-19 Pandemic: Lessons From a Case Study of Favipiravir. Clinical pharmacology and therapeutics, 10.1002/cpt.2251. Advance online publication. https://doi.org/10.1002/cpt.2251

  6. Hashimoto, T., Ozaki, A., Bhandari, D., Sawano, T., Murayama, A., Shrestha, S., Sah, R., Tanimoto, T., Montenegro-Idrogo, J. J., & Rodriguez-Morales, A. J. (2021). Limited capacity of SARS-CoV-2 variants testing in Japan: A secondary analysis using publicly available data. Travel medicine and infectious disease, 43, 102145. Advance online publication. https://doi.org/10.1016/j.tmaid.2021.102145

  7. Ozaki A, Onoue Y, Murayama A, Tahara T, Senoo Y, Kosaka M, Mori K, Shimada Y, Yamamoto C, Tsubokura M, Torii HA, Uno K. (2020). Analyzing the roles of newspaper articles and tweets to help alleviate sudden physician absenteeism: case study of Takano Hospital in Fukushima in the long-term aftermath of the 2011 Japan’s triple disaster. JMIR Preprints. https://preprints.jmir.org/preprint/26114

 

メディア出演

  1. 東洋経済オンライン

  2. 269人に製薬企業が払う年4億円の中身-なぜ少数の医師に製薬マネーが集中するのか

URL: https://toyokeizai.net/articles/-/393010

  1. Facta

  2. 「製薬マネー」知られざる実態-製薬・医療機器企業との金銭不祥事で三重大学の臨床麻酔科は崩壊した。日本の大学医局は大小様々な不祥事の温床だ。

  3. https://facta.co.jp/article/202102025.html

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​広島大学医学部

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1.医療ガバナンス研究所に来たキッカケ

地方での学生生活に漠然とした焦りを感じているけれど、実際に何をすべきかわからないという問題を抱えている学生は多いのではないでしょうか。特に地方大学に通う大半の医学生は、小さい頃から地元の大学の医学部への入学が正しいと信じ、立ち止まって将来についてゆっくり考えることもなく、入学して初めてその敷かれたレールの閉塞感や物足りなさを覚えるのです。地方大学の医学生全員ではないにしても、少なくとも私はそんな学生の一人でした。

広島で生まれ、広島大学附属小学校・中学校・高等学校、一年浪人を経て、広島大学医学部医学科へと進学し、地元で悩み続ける私にとって、上昌広先生とのお会いした時の衝撃を今でも覚えています。

上先生との出会いは、私の所属している学生団体MNiST(画像診断センターMNESご講演のもと、「学生の目線から医療、そして世界をより良いものにしたい」をモットーに活動している学生団体)が主催した講演会への参加です。

 「異なる文化に触れなさい、優秀な人の元で学びなさい。」という、ご講師である上先生のお言葉は、その時の私の心に深く刺さりました。講演会の翌日すぐに上先生に「研究室に伺いたい」と伝えると快く承諾していただき、とんとん拍子で医療ガバナンス研修所へのインターンシップが決定しました。

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手前左から、アクト中食(株)専務取締役の平岩宏隆さん、(株)エムティーアイ社外取締役・(株)エムネス社外取締役・医療法人社団ときわ会グループ顧問の土屋了介先生、上昌広先生、溝上、

奥がMNiSTメンバーのみんな

2.医療ガバナンス研究所でのインターンの出来事や思い出

学術雑誌Natureへのレター投稿、上先生への取材の同席、東京の真ん中にあるナビタスクリニック新宿の外来診療見学、福島県いわき市のときわ会常磐病院での病院見学などインターンに行かなければ、知らなかった、触れることさえできなかったことがたくさんありました。同世代の他のインターン生との何気ない会話からも刺激を受けました。

上先生は、ただの学生である私にも、医学界だけでなく政界や経済界の一流の方々に会わせて下さり、各分野における日本や世界の変化や流れを担うための「いろは」に触れさせていただきました。

また、上先生をはじめ、医療ガバナンス研究所の方々は、何もわからずに飛び込んだ私を優しく迎え入れてくださり、惜しみなく自身の経験や価値観を教えてくださったり、私の将来について相談に乗ってくださったりしました。

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3.医療ガバナンス研究所での活動

普段は広島で学生生活を過ごしているので、他の学生さんに比べて上研へ足を運ぶことは少ないのですが、製薬マネーデータベース」の作業や、M R I Cや医学生向けのweb媒体への記事掲載など現在はオンラインで行えることを中心に活動を行なっています。

「元気にしていますか。」、「文章を書いてみませんか?」、「鹿児島へ自顕流の稽古に行きましょう。」と、上先生や研究所の皆さんはお忙しい中いつも気にかけてくださり、そのような面からも本当にこのご縁を大切にしていきたいと思うばかりです。

 

4.医療ガバナンス研究所で学んだこと

あげていくとキリがないのでここでは特に印象に残っているエピソードを1つ紹介させてください。

 

上先生はよく”読んでご覧”とU R Lを私に送ってくださり、いつも勉強させていただいているのですが、その中でも特に印象に残っているのがスロバキア・コメニウス大学医学部を卒業された妹尾優希さんの記事でした。「世界で戦う人」「タフな女性」と、上先生は一言添えて妹尾さんの記事を送ってくださります。東京から遠く離れ、福島県のときわ会常磐病院へ見学に行った際、「妹尾さんとはお会いしたことあるの?まだなのか〜。会えたらいいね。」と多くの先生がおっしゃっていて、私の中で妹尾さんは憧れの有名人です。

東京でのインターン中にお会いする機会もなく広島に帰り、いつかお話しできたらいいなと思っていたのですが、巡り合わせで妹尾さんに文章を書く仕事をふっていただきました。この時、「あの妹尾さんと!!!」と思い、私はとてもうれしかったです。

 

たくさんの意見がある「製薬マネー」に関する文章だったので、正直なところ非常に神経を使い、一言書いては消して・・・の連続でしたがなんとか完成させて妹尾さんに提出しました。自分の中で100%ではないけれど、確実に時間をかけて頑張ったと言える文章に赤ペンを入れられて返ってきたのは、今でも見たら凹むくらい完膚なきまでに打ちのめされたものでした。(笑)

 

誤字脱字、言葉の言い回しなどはもちろん、「どうしてそう思ったのか」、「あなたの考えは何か」、「何がどう違うのか」と、文章のたくさんの箇所に校正を入れてくださり、最後には「例えばこんなふうに書く」と妹尾さんの書き方を原稿用紙一枚では全然足りないくらいにわたって説明していただきました。

わかりやすい文章をいかに書くか、どのように読者へ興味を持たせるのかなど妹尾さんの「書き方」を多く垣間見ることができる赤ペンのたくさん入ったあの文章は、お金では買えない貴重な私の財産であり、宝物です。

オンラインでの作業で、しかも顔も知らなかった後輩に、研究室の繋がりというだけで、お忙しい中こんなにも惜しみなく指導してくださった妹尾さんに心より感謝するとともに、「上研のやり方」を改めて感じた時間でした。

 

 

5.医療ガバナンス研究所でのインターンを考えている学生に一言

「行きたいです。」「やりたいです。」を学生のためを思って損得勘定無しで一緒に叶えてくださる大人の方がこんなにもいらっしゃることを上研に来て初めて知りました。皆さんも是非身を以て感じてみてはいかがでしょうか。

6.主な業績のリスト

  1. 時事メディカル 

コラム 医学生のフィールド

医学生が製薬マネー調査に携わって感じたこと ~溝上希(広島大学医学部医学科3年)~

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​和歌山県立医科大学

村田七海

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1.医療ガバナンス研究所でインターンをしたキッカケ

私は元々生まれも育ちも和歌山県で、大学卒業後も和歌山の地域医療に従事する予定です。そして、将来は地元・和歌山に根を張りたいと考えています。和歌山県立医科大学に入学した時から大学生のうちにできるだけ色々な考えを持つ学生と交流したり、多くの国を訪れ自分の視野を広げたい考え、様々な活動を行ってきました。

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カンボジアのこども病院でのボランティア活動・クリスマス会

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カンボジアのこども病院でのボランティア活動・子供たちとの一枚

例えば、私は「若者のアイデアで病いをなくす」をモットーに学生団体WAKA×YAMAを立ち上げ、ボトムアップによるヘルスケアの課題解決に挑んできました。そして学生団体を通して活動してきた4年間の中で、認知症や発達障害、メンタルヘルスなど様々なテーマに取り組みました。そのたびに、溢れる知的好奇心に対して自身の仮説検証能力が足りていないと何度も感じました。課題の原因を突き詰めたいのに、より深く知れる資料が見つからない時や、仮説の範疇でしか考えられない時は無性にもどかしさを感じ、自身の力が足りていないと気付かされました。さらに、エビデンスをもとに課題を設定し、プロジェクトを立ち上げ、実際にプロジェクトを実行するところまでは出来ても、実施したプロジェクトの有効性や新しい価値をエビデンスとして世界に発信することがこれまでの私にできませんでした。このもどかしさを克服し、自分自身でエビデンスを生み出し世界に伝えられるようになりたいと思い、研究活動を始めました。

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学生団体WAKA×YAMA

そこで私は、まず在学する和歌山県立医科大学のMD-Ph.D.コースに登録し大学の研究室に所属して研究活動を始めました。しかし、いざ研究を始めようとすると、新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックが起こり大学への入校が禁止されたため、研究が進まなくなりました。そのような中で、大学以外でも研究できる環境がないか探し、以前からの友人が医療ガバナンス研究所でインターンしていると聞き紹介いただいたことがキッカケです。

 

2.医療ガバナンス研究所でのインターン中の出来事や思い出

インターンを始めて4か月経ちますが、まだ指導してくださる先生方には一度も実際に対面でお会いしたことはありません。

研究はMessengerやメールなどを使ってオンラインで先生方と連絡を取りながら進めています。特に印象に残っていることは、研究を初めてすぐの、まだ右も左も分からない頃に尾崎章彦先生から「村田さんのやることはできるだけ早く打ち返すこと(返信すること)」と言われたことです。以前、先生方に論文原稿を送ると素早く返事してくださるのですが、私は先生方からのアドバイスを反映するために考えあぐねてしまい、返信が遅くなってしまうことがありました。しかし、尾崎先生からいただいたこの助言の通りに、自分の分からないところを明確にしたうえで、とにかく早く返信することを最優先するようになってから、先生方とのキャッチボールの頻度が増え、自分一人で溜め込むのではなく先生方と議論していくなかで方向性を定め、自分の理解を深めていくという過程が楽しくなりました。

 

3.医療ガバナンス研究所での活動

私が関わらせていただいている研究プロジェクトは大きく分けて二つあります。一つ目は、オレンジホームケアクリニック(以下オレンジ)との共同研究です。現在は、オレンジが実施した「医療的ケア児とディズニーに行こう」というプロジェクトの効果を学術論文としてまとめています。この研究の次は、医療的ケア児(心身の機能に障害があり、呼吸や栄養摂取、排泄などの際に、医療機器やケアを必要とする子供たちのこと)の社会参画を促進する事業を行う予定です。次の事業については、研究計画書を書き、民間の財団から助成金をもらうための書類申請を行うところから担わせていただきました。その過程で、個人的に医療的ケア児のご家族にインタビューさせていただき、医療的ケア児の課題がいかに重要か知りました。この経験から私の活動によって、少しでも社会的なハードルを下げ医療的ケア児が社会参画しやすい環境を整えたいと思うようになりました。

二つ目は製薬会社と医療者の利益相反(以後、製薬マネー)に関する研究です。最近、谷本先生、尾崎先生に指導いただき、日本から出た世界的にも前代未聞の研究不正事件「ディオバン事件」のその後と現在の医療制度の問題点についてまとめたLetter(短いタイプの論文)を書かせていただきました。そして、今は診療ガイドラインの利益相反について調べています。まだ臨床経験の少ない医学生の私にとって、初めはこのような製薬マネーを肌体験としてイメージすることが出来ず漠然と難しいなと感じていましたが、調べていくうちに患者中心の医療を守るためには、研究不正や不適切な利益相反の問題について医療者ひとりひとりがより強く自覚する必要があるのではないかと考えるようになりました。

今後も今の研究を続け、いずれは私が今まで関わってきた地元和歌山でのプロジェクトも、英語論文などとして世界に発信したいと考えています。

4.医療ガバナンス研究所で学んだこと

私はこれまでのインターンを通して、論文執筆はチーム戦であることを学びました。例えるなら、バレーボールでラリーを続けた先にアタックがあるように、論文執筆においても研究チームの先生方と何度もやり取りを繰り返した先に、やっとジャーナルに投稿し査読を受け、さらなる推敲を重ねたうえで出版に至ります。当たり前ですが、自分が打ち返さないと返ってこないし、ゲームも進まない。だから、調べて、修正し、書いて、早く返すことの繰り返しです。

私は、尾崎先生から「一人前に論文書けるようになるまで、だいたい5年はかかる。だから、いかに能動的に続けるかが大事」と教えていただきました。長期的に続けていくために、いかに研究に使う時間を作れるかだということを常に考えさせられます。難しいテーマなどにあたると果てしなく感じることもありますが、「この先生方についていけば、必ず一人前に論文書けるようになる」と確信できるほど丁寧に指導してくださるので、臨床実習や他の活動と並行しながらでも能動的に続けることが出来ています。

 

5.医療ガバナンス研究所でのインターンを考えている学生に一言

まずは飛び込んでみてください。「研究してみたい」、「論理的に文章が書けるようになりたい」などモチベーションは何でもいいと思います。さらに、年齢や地理的な距離にかかわらず、様々な学生が共に活動しているため、とても刺激的で、自分ひとりでは思いつかないような研究テーマや視点を持ったインターン中の学生に出会います。自分の興味に合うか合わないかは、やってみないと分からないので、まずは飛び込んでみることが何よりも大切だと思います。

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秋田大学医学部医学科

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1.医療ガバナンス研究所でインターンをしたキッカケ

私は高校1年生の時に、友人である村山安寿さんの紹介で上先生にお会いしました。当時の私はすでに医師になりたいという思いが強く、高校生のうちから将来につながるような学びを得られる場を求めていたので、とりあえず行ってみようという軽い気持ちで友人について行きました。高校生のうちは数回ご挨拶に伺った程度でしたが、大学4年生になった今年(2021年)になって再び村山くんに声をかけてもらい、論文を書かせていただいたり、先生方や村山くんの研究のお手伝いをさせていただいたりしています。

 

2.医療ガバナンス研究所でのインターン中の出来事や思い出

初めて上先生にお会いしたのは高校1年生の春でした。医学の研究室に行くという話で高校クラスメイトだった村山くんから誘いを受け、医師になりたかった私は、特に何も考えず、とりあえず付いて行きました。私は漠然と高校生のうちから何か医師としての将来に役立つことを学びたかったのです。なんとなく、で上先生の元へ伺った私は衝撃を受けました。それまでにも高校の課外活動などで都内の医学部の研究室を訪問させていただいたことがあったのですが、その時にお会いした先生方とはまるで違ったのです。

お忙しい中、時間をとっていただき上先生は高校生の私たちに様々なお話をしてくださいました。医学についてのお話だけでなく、歴史や政治の話など、知識も教養もない私には十分に理解できていない点がありましたが、とても興味深く、こんなお医者さんもいるのだと興奮しました。

 

この訪問の際に、上先生が福島で活動されている先生方のお話をしてくださいました。私は東日本大震災をきっかけに医師を目指したので、ぜひその現場をみさせていただきたいと思い相談したところ、快く承諾していただき、当時南相馬市立総合病院(福島県南相馬市)で研修医をされていた山本佳奈先生を紹介してくださいました。そして私は2016年4月、東日本大震災から5年を迎えた福島を訪問しました。

 

福島では、南相馬市立総合病院の見学や福島県沿岸部の訪問をさせていただきました。

震災から5年経ち、東京に住んでいた私にとって、震災は恐ろしい記憶ながらも過去の出来事となりつつありました。しかし、目にした光景は想像を遥かに超えたものでした。福島の時は止まったままでした。

 

福島県浪江町を訪れたのはちょうど立ち入り禁止が解除されたばかりの頃で、街中で見かける時計はどれも津波が来たであろう時刻をさしたまま、車で進む道の両側には基礎だけ残された建物とたくさんの瓦礫がありました。復興という言葉からは程遠い状態で、ここに住んでおられた方々のことを思うととても胸が苦しくなりました。浪江町では、現在震災遺構として整備が進んでいる請戸小学校にも訪問させていただきました。

そこで見たのは教室の中は空っぽで、壁もなく、ただ、津波の進行方向であろう一部屋に給食室の巨大な冷蔵庫や調理釜などの物がたくさん詰まっているという、なんとも恐ろしい光景でした。

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請戸小学校の教室の写真

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請戸小学校の給食室の写真

ニュースで見たどの映像よりも生々しく痛々しいもので、実際に現地に伺うことで「復興」までの長い道のりを体感しました。また、この残酷な光景を前に、大切なものを多く失った被災者の方々にとって、真の意味で「震災前」に戻ることは二度とないのではないかとも思いました。

 

上先生や山本先生、南相馬の方々には、このように現地に足を運ばなければ、知らなかったこと、考えなかったことを学ぶ機会をくださったことに大変感謝しております。ありがとうございました。

 

3.医療ガバナンス研究所での活動

今年(2021年)の4月から論文を書かせていただいたり、そのお手伝いをさせていただいたりしています。これまで論文を書いたことがなく、読むことすらほとんどしてこなかった私ですが、尾崎先生や谷本先生などの先生方や一緒に執筆してくれた村山くんのおかげで、なんとか初めての論文書くことができました。テーマは新型コロナウイルス感染症対策分科会の利益相反についての内容で、現在医学系のジャーナルに投稿している段階ですが、内容がセンセーショナルなこともあり、エディターの反応が良くなかったり、査読に進んでも一部の査読者から明らかに不等なコメントが来たりと、かなり難航しています。

また、同時に乾癬性関節炎の診療ガイドライン著者の利益相反についても調査しており、先日はガイドラインにおける利益相反研究の世界的第一人者であるオクラホマ大学のMatt Vassar教授とZoomで意見交換し共同研究を始めるという貴重な経験をさせていただきました。上先生、谷本先生、尾崎先生など世界の第一線で活躍する多くの先生方が私たち学生の挑戦を応援し、様々なチャンスをくださり、また一緒に研究している同世代の優秀な学生からは日々刺激を受け、自分を成長させられる場であると感じています。

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(筆者(写真左)と友人の村山くん(写真右)、上先生に大学合格の報告に行った際の一枚)

4.医療ガバナンス研究所で学んだこと

単に自分の知らなかった知識を埋める、というだけでなく、先生方や他の学生の姿勢から日々多くのことを学んでいます。特に、皆様の情報に対するアンテナの感度が高く、様々な情報を共有してくださるところは、私が見習うべきところであると感じています。様々な手段で情報を得て、共有し、お話ししてくださる皆様に私の視野を広げていただいています。

 

5.医療ガバナンス研究所でのインターンを考えている学生に一言

私は地方大学で学んでおり、なかなか東京の研究室に伺うことができませんが、オンラインでも十分に活動を続ける環境が整っています。また、先生方からの丁寧なご指導やともに活動する同世代の学生から刺激を受け、自分を成長させることができる場だと感じています。いまこの文章を読み医療ガバナンス研究所でのインターンを考えている学生がいましたら、ぜひ一緒に活動できる日を楽しみにしています。

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東京大学法学部

田原大嗣

2019年7月31日、まだ高輪ゲートウェイ駅が開業していなかった頃、私は研究所にいました。

国家公務員の就職活動に失敗し途方に暮れていた私に、大学剣道部の先輩で、以前より剣道雑誌の編集などを通して交流のあった上昌広先生より、「一度、遊びにおいで」とのお誘いがあったのです。

 

失敗の理由もわからず、資格でも取ろうかなどと迷走していた私に、上先生はただ一言、「相馬市にインターンに行きなさい」とおっしゃり、その日のうちに、相馬市の立谷秀清市長に私を紹介してくださいました。

 

また、相馬市に行くまでの日々、研究所でのインターンに参加することとなりました。最初に言い渡されたのが、研究所の周辺、高輪地区の歴史を調べ、新聞に投書すること。次に、私のルーツでもある熊本県の歴史を調べ、ネットメディアに寄稿すること。

こうした、「国内各地の歴史や地理を調べ、具体的に文章に起こす」行為で、視野を広げ、表現力を鍛えることができました。

 

そして、12月の1ヶ月間にわたり、福島県相馬市役所、相馬中央病院という「現場」でのインターンに参加させていただきました。

「相馬野馬追」の時代から続く長い歴史の中で、相馬市では「伝統」と「柔軟さ」の両者が培われ、現在相馬市に住む人々にもそれは確かに受け継がれている、ということを、実際に現場に足を運び、そこにいる方々と交流することで存分に学ぶことが出来ました。

これは、東京で「真面目」に、主体性もなく法律を学ぶだけでは到底得られない経験でした。

(相馬市の詳細なレポートは、以下URLをご覧ください。

→ ① https://japan-indepth.jp/?p=49925 ② https://japan-indepth.jp/?p=49932 )

 

以上のような経験を積んだことで、国内各地のコミュニティに息づく人々の生活を、よりリアリティを持って理解し、公務に対する思いをさらに強めることが出来ました。

相馬市での経験はじめ、一連のインターンで得た成長を生かし再チャレンジした国家公務員の就職活動で、私は無事第一志望の省から内定をいただき、4月から社会人としての生活を始めます。

 

研究所では、まず「事実から、具体的に語ること」「現場に実際に足を運び、一流の、第一線の人と交流すること」といった行動の指針を提示していただき、さらに、それを実践する上での最大限の後押しをいただきました。

私にとって、研究所でのインターンは、「(医学生か否かを問わず)若者に『縁』をもたらし、殻を割ってくれる場」でした。

これからも、インターンで学んだことを肝に銘じ、公務の道を邁進していこうと思います。

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東京大学医学部

小坂真琴

私は、高校生の時に当時の東大医科学研究所にあった研究室に伺ったのが初めてでした。高校時代に2,3度伺ったのち、大学で医学部に入ることが決まってから再びお世話になっております。

研究所でのインターンでは、論文執筆のためのデータ収集のお手伝いや、自分でデータを作成して考察を文章にまとめる作業を行うと同時に、勉強会に参加しています。

一昨年、都道府県別の東大合格者数について、歴史的な考察を交えながら分析した文章は、多くの「滋賀」関係の方に読んでいただき、それぞれの視点から様々な反応があり面白かったです。すでに世の中にオープンになっているデータであっても、それをどんな視点から考察し、どんな仮説を立てるか次第では、意味を持ち、面白くなることを実感しました。

 

普段大学で授業を受けているだけでは会うことがなかったような、多様な業種で活躍している方々にお会いする機会があるのも大きな魅力です。一昨年福島の野馬追に伺った際には、相馬市の立谷市長をはじめとする多くの方にお会いし、当時中学生であまり知ることのなかった東日本大震災について、改めて学びなおすことができました。

 

また、最近であれば風疹・麻疹のワクチン接種など、世の中で今まさに話題になっている分野の研究や課題に取り組める点も面白いです。例えば今年は、福井で在宅医療を行っているオレンジホームケアクリニックでインターンをさせていただき、研究所の先生方に指導いただきながら、ケースレポートのような形で論文にまとめました。これから日本中で伸びていく在宅医療の分野に関わりつつ、自分の出来る範囲でその記録をまとめて発信する練習になりました。

 

大学の医学部の授業は、多くが治療のための学びですが、医師になってからの人生ではそれ以外の社会の動き方や世界の流れも無視できません。その部分に興味がある方に、ぜひインターンをお勧めします。

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ハンガリー センメルワイス大学医学部

吉田いづみ

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私はTeam Medicsという学生団体で久住英二先生をご紹介いただき、2016年より医療ガバナンス研究所で上昌広先生の元でインターンをさせていただきました。その頃の私は、炎症性腸疾患を発症し、大学休学を余儀なくされていたため、「もう大学を辞めて日本に帰ろうか」とまで考えており、医療者になることを半ば諦めていた時期でもあります。そんな時にこの研究室と出会い、この病気にかかったことさえも前向きに変えてしまう先生方のご指導にどんどん魅せられていきました。

もちろん毎日のご指導は厳しいものも多く、自分の至らない点に反省することも多かったですが、その中でも特に「たくさんの一流の人と会い、多くの本を読んでとにかく書いて発信すること」を学びました。毎週のように色んな所に行かせていただき、そこで学んだ経験を記事に書く、そしてそれによって多くの方と繋がることができ、結果として連載を書かせていただくまでになりました。

 

また、復学後も夏休み2ヶ月を使って相馬・南相馬を拠点にご活動されている坪倉正治先生にご指導いただき、社会人としての礼儀から論文の書き方までご指導いただきました。その短期間で福島だけでなく、大分や(国外では)ベラルーシまで同行させていただき、医者として、研究者として、そして人として、多くのことを学ばせていただきました。

 

最後に、よく官僚や大学教授が「若者は宝だ」と言っているのを耳にしますが、実際、彼らがしていることは本当に私たちのためになることなのでしょうか。私はそうは思いません。そんな自分の利益ばかり考えているおじ様方より、個々に対応してご指導くださる研究室の先生方こそ、私たち若者に必要な真の指導者であり、自分の人生を豊かにするために必要なのではないかと考えます。まだまだ未熟者の私ですが、今の自分があるのは医療ガバナンス研究所の皆様のおかげです。このご縁に心から感謝致します。

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