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理事長 上昌広
日本のコロナ重症患者対応が抱える決定的弱点 医療崩壊の責任は民間病院でなく厚労省にある 2020/12/27
「12月25日には、田村憲久・厚生労働相が、病床が逼迫している地域で、重症向け病床がある医療機関に対して、1床あたり1500万円を補助することを表明した。もちろん対応は不可欠だが、筆者は、このようなやり方に違和感を抱いている。
下記の表をご覧頂きたい。欧米と比較して、日本は感染者も重症患者も少ないことがわかる。」
「コロナ重症者に対して、欧米諸国が、それなりに対応しているのに、数の面で大きく見劣りするわけではない日本の医療がどうして崩壊してしまうのだろう。個別個別の病院や医療関係者に責任があるわけではない。全体を統括する厚生労働省の方針、運営に問題があると言わざるをえない。
(略)日本ではコロナ重症者を集中的に診る病院が整備されていないことだ。どのような病院が重症患者を受け入れているのだろうか。実は、このことについて厚生労働相と東京都は情報を開示していない。知人の東京都議に調査を依頼したが、「東京都からは教えることはできない」と回答があったという。知人の都立病院勤務医に聞くと、「1つの病院で受け入れる重症患者は5人程度」という。多くの病院が少数の重症患者を受け入れていることになる。
(マサチューセッツ総合病院や東京大学医学部付属病院のようにコロナ重症者を一手に引き受ける方が、)多くの専門医や看護師を抱えるため、多数の施設に分散して受け入れるより効率的だ。イギリスの主たるコロナ引き受け病院においてもマサチューセッツ総合病院ほどではないにしろ、一部の施設で集中的に患者を受け入れているのがわかる。
日本の医療は診療報酬、病床規制、医学部定員規制などを通じて、厚労省が、がんじがらめにしている。小泉政権以降、診療報酬は据え置かれ、開業医と比べて、政治力が弱い病院、特に民間病院は、コロナ感染が拡大したからと言って、病院経営者が柔軟にコロナ重症病床を拡大させる余裕はない。このあたり、病院経営者の本音が知りたければ、筆者が編集長を務めるメルマガ「MRIC」で配信した「コロナ禍における診療体制維持」(http://medg.jp/mt/?p=10026)をお読み頂きたい。都内民間病院院長(匿名)による切実な現状が紹介されている。
5~10人程度のコロナ重症患者を受け入れて、それに対して高額な診療報酬が支払われても、通常の手術などの件数が激減すれば、病院は倒産してしまうし、さらにコロナ重症患者の治療は手がかかり、多くの医師・看護師を要するが、普通の病院にそのような人的リソースはない。」
「コロナ重症患者を適切に治療するには、中核施設を認定して、集中的に資源を投下するしかない。これは現在の厚労省の施策と正反対だ。いまのやり方を押し通せば、多くの施設が疲弊し、PCR検査を抑制している現状では、院内感染の多発が避けられない。まさに現在の日本の状況だ。コロナ重症者対策は方向転換しなければならない。」
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