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Japan In-depth

理事長 上昌広

コロナ第3波とPCR論争 2020/11/28

『コロナ対策の目的は、死者を減らし、経済的ダメージを少なくすることだ。表1は、東アジア4カ国の人口10万人あたりの死者数、GDPの前年同期比を示したものだ。日本のコロナ対策が失敗しているのは、一目瞭然だ。


日本政府はコロナ対策に金を惜しんだわけではない。日本のコロナ対策費の総額は約234兆円で、GDPの42%だ。これは主要先進7カ国で最高だ。

では、何が悪かったのだろう。私は科学的でなかったことだと考えている。11月11日、英『エコノミスト』誌は、世界各国のコロナ対策の科学的な妥当性を検証した記事を掲載した。この記事では、スイスの科学出版社『フロンティアズ』が、5,6月に世界24カ国の約2万5,000人の研究者に対して、自国のコロナ対策が、どの程度科学的か聞いている。最も「科学的」と評価された国はニュージーランド、次いで中国だった。70%以上が「科学的」と回答している。一方、もっとも「非科学的」なのは米国、ついでブラジル、英国と続く。米国については「科学的」と回答した研究者は約20%で、約70%が「非科学的」としている。では、日本はどうだろう。約40%の専門家が「科学的」、25%が「非科学的」と回答していた。24カ国中17位で、アジア5カ国中では最低だ。

問題は、科学的判断とされているものが、間違っている場合だ。科学的な妥当性は専門家しか判断できず、誰からもチェック出来ないため、容易に暴走してしまう。これこそ、現在の日本がおかれた状況だ。

実は最近になって無症状の人へのPCRについて、決定的な「実証」研究が報告された。それは、11月11日、医学誌の最高峰である米『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』オンライン版に掲載された米海軍医学研究センターの臨床研究だ。この研究は、これまでに実施された無症状者スクリーニングの世界最大の研究だ。信頼性は高い。注目すべきは、51人の検査陽性者のうち35人は、初回のPCR検査で陰性だったことだ。無症状の感染者を介して、集団内で感染が拡大したことを意味する。若年者は感染しても、無症状者が多く、有症状者を中心とした検査体制では、殆どの感染者を見落とすことを示唆している。日本の第三波では若者の感染者が多く、家庭内感染が問題となっているが、宜(むべ)なるかなだ。残念ながら、日本の全国紙で、この研究を報じたところはない。田村大臣の答弁にも盛り込まれていない。

コロナ対策は科学的に合理的であるべきだ。その際、参考にすべきは医学研究だ。各国の試行錯誤が臨床研究として情報共有されている。田村大臣の答弁を聞く限り、厚労省内では科学的な議論は十分になされていないようだ。科学的エビデンスを無視すれば、感染は拡大し、経済は停滞する。ツケを払うのは国民だ。猛省を求めたい。』

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